Days from US

主にニュースはNPRをソースに日々翻訳していきます。英語学習に関する自分の体験もここにシェアをしていきます。

米国政治史に残る"この1週間"

 国家を揺るがす危機の存在とは裏腹に、この1週間は政治に関連するイベントが目白押しで、最早何が起こったのか説明することすら難しい。つまり、大統領選挙が行われる今年の始まりを占うこの大事な時期にいささかの混乱が見える。ただでさえこの大統領選挙の年はいつも、国民の政治的関心に限らず様々な話題に我々が左右されるサマを見るのに。

 これだけ多くのイベントが立て続けに起こると、正直意義のある政治的な取り組みが何だったのか思い出すのに時間がかかる。というか、自分がどれだけ4年前に政治に対する姿勢を確立したのかなんてとても小さな事に思えるぐらい、忘れてる事すら分からないレベルの状況である。

 他方、トランプ大統領にとってはこんなに嬉しい時間は今までに無かっただろう。ウクライナ疑惑での無罪確定、いくつかの経済指標が米国経済回復を示した事。11月に対峙する民主党候補者を絞り込む為の党大会でまさかの管理ミス。ウクライナ疑惑の裁判やその前にあったロシアの選挙介入に関する一連の捜査が大統領を権力権威を弱めると考えた人々にトランプは失望もしたが、これらのイベントを通じてむしろ力をつけたのか、彼はここ最近実績も出し始めている。週始めは危機に瀕していたものの、無罪を勝ち取り週末にはホワイトハウスの意向に反して弾劾裁判で証言を行なったスタッフ二人をクビにして今週を終える。弾劾裁判は米国近代史上三度目と、大事件ではあるもののそこまでの盛り上がりは無く、決まった手順がただ繰り返し行われたようにも国民の目には見えた。

 

 月曜日、待ちに待ったアイオワでの民主党党大会では一番大事な投票集計でトラブルが発生。史上稀に見ぬ、勝者が誰なのか誰も分からないまま大会は終わりを迎えた。翌日になってもアプリで投票を行なった分の集計が終わらなかった。

 

 火曜日の一般教書演説では過去に類を見ない性質の言葉を我々は目にした。このイベントの意義は普段厳格に独立する立法機関が行政の長である大統領を招き、行政方針について演説を聞く事である為、普段の対立もこの日この時間だけは互いの尊重とリスペクトを失わないのが通例と言って良かった。米国の強さを再確認する、その強さは国家の統合によるものであるという信念が見て取れるのが一般教書演説だった。

この日の大統領の言葉はまるで強さを見せつける為に、プロレスラーがテレビを意識してパフォーマンスをしている印象を受けた。奨学金に苦しむ生徒、米軍兵士が家族の元に戻る演出、ラジオパーソナリティにメダルを送る等、この演説の中で起こったサプライズもその一環なのだろうか。民主党はただ黙って見ている訳では無い。大統領が薬の価格について言及すると去年下院を通過し、上院で否決された薬の名前を連呼するという行動を取った。マイク・ペンス副大統領とナンシー・ペロシは大統領の後方に座り、全ての風景を眺める立場にある。冒頭、ナンシーペロシは大統領と握手をかわす為、手を出したがトランプはこれを拒否。報復にペロシ氏は通例の大統領紹介の文言を省略し、最低限の言葉にこれを留めた。大統領が演説中、ペロシ氏は明らかに機嫌を損ねており、最後は原稿を破り捨てる始末。これに関してペロシ氏にコメントを求めると、「大統領が真実をおざなりにしたので、私も大統領の言葉を蔑んだ。」との事。

 水曜日は長きに渡ったウクライナ疑惑が一旦の終焉を迎えた。2つの文書は議会で半数の支持すら得られず証拠として不相応と判断され、弾劾に上院議員の67票が必要な本件はそもそも無罪判決が確定していたようなものだ。しかしながら共和党ミット・ロムニー議員の造反は、自党の大統領弾劾に投票した米国史上初のケースとして歴史的なものとなった。大統領は同時間にトランプ体制はいつまでも続くのだと国民を諭すツイート。翌日にはロムニー議員を同じツイッターで揶揄する。

 

 木曜日は「何故アイオワの集計が終わらないのか」について国民はその理由を知ることになる。要は電話回線パンクし、集計作業が進まなかったという報告だった。この報告によって様々な事を国民は学ぶことになるのだが、まずは米国のインフラが課題を抱えている点、民主党の担当者は投票のやり直しを訴えている点、そして民主党の管理能力の無さについてである。大統領はロシア介入疑惑の時と同じく「無罪」を強調する広告を制作し、それまでウクライナ疑惑で彼を批判した政治家や評論家をまとめて非難した。朝食会では「政治に宗教を持ち込む奴は嫌いだ」と暗にロムニー氏を批判。その数席先にペロシ氏は座っていた。

 依然アイオワの勝者が決まらず、ニューヨークタイムズが根本的な要因について案ずる中、他のメディアは「今週末に勝者を決めるのは"早すぎる"」と状況を茶化す始末。事態は言葉以上に深刻で、ただの集計ミスじゃ無いと国民が気づいた時点では既にあまりにも多くの時間が経過していた。ブティジャッジとサンダースが勝利し、バイデンとウォレンが辛くも残留という状況は何とか伝わってきた。

 

 金曜日はニューハンプシャーでの民主党討論会。七人の候補が議論を戦わせる中、部ティジャッジは名実ともに議論の中心に居た。2024年が実際にどうなるかはともかく、また金曜日の討論の質に関わらずアイオワでの失態はそれをマイナス方向に連想させるに相応しいものだった。果たして民主党は大丈夫なのか。1970年来続いたアイオワ州の重要性は今後その性質を変化させる可能性があるかもしれない。それぐらい大きな印象を国民に植えつけてしまったのだ。

 

 アイオワ州民主党党大会、一般教書演説、大統領の無罪判決、投票集計のハプニングというより最早災害レベルの事件、ニューハンプシャー州公開討論、歴史に類の無いこの1週間を、国民が二度同じ体験を今後するとは思えない。

 

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